海外デオドラントブランド「Secret/シークレット」の新CMが、トランスジェンダーの日常の不安をリアルに描いていると話題になっています。たった30秒、言葉数の少ない広告ですが、共感を巻き起こすメッセージ性の強い仕上がりになっています。
トランスジェンダーにまとわりつくトイレ問題
source/The Charlotte Obserber
大きな物議を醸しているノースカロライナの州法「H.B.2」通称トイレ法。以前こちらの記事でもご紹介しましたが、「Public Facilities Privacy & Security Act=公共施設におけるプライバシー&安全法」という法律で、出生時の生物学的性に基づいたトイレを使用しなくてはいけない、というものです。この法には賛否両論あり、LGBTの権利を剥奪しているという主義主張がある一方で、性犯罪やプライバシー侵害を防ぐためには必要だ、と賛成の意を唱える人も多くいるのが実情です。
そんな法に対する賛否や疑問、差別をテーマにした活動はアメリカ国内で多々繰り広げられ続けています。そして今回話題となったCMも、トイレに関連する内容です。
トイレから出れない……内なる葛藤
source/HUMAN RIGHTS CAMPAIGN
実際にトランスジェンダーの人々が感じているのは、自認している性のトイレを使いたいという願望だけではありません。たとえ自認している性のトイレを使えたとしても「周囲の目に対する不安や恐怖、漠然と感じる恥と戦わなくてはいけない」、そんな内なる葛藤を抱えています。たった30秒という短い時間で、その葛藤をリアルに描いたのが海外デオドラントブランド「Secret」の新CM。
物語の主人公であるダナは、後からトイレに入ってきた3人の女性を前に、個室から出るのをためらいます。
そこに言葉はないものの、彼女の内に秘めた感情が巧みに語りかけてくるのが分かります。
最終的に葛藤を乗り越えたダナは深呼吸をします。
勇気とともにドアを開け、颯爽と出て行くのです。
ダナを演じるのは、自身もトランスジェンダーであるアーティスト、カリス・ワイルド(Karis Wilde)。独特なオーラが美しいですよね。
『QUEERTY』のインタビューに答えたカリスは、こう語っています。
「私も、同じように不安を感じる瞬間っていつもあるの。でも、そんなこと気にしない!ってこうやって演技できるくらい、今は心の整理ができてるわ。撮影中は、(演技のために)不安な気持ちを出していいんだって自分に言い聞かせてたの。そうしたら、どんだけこの感情を抱えてたんだろうって思い出して怖くなって。途中で泣きそうになってるでしょ?」
トランスジェンダーに限らず、「外に出れない」という葛藤を味わったことがある人も中にはいると思います。トイレの個室から出ようとしたら外から声が聞こえてきた、その声の持ち主は自分の苦手な人たち。そんな時って、一瞬出るのをためらいませんか? 話すのが怖いな、何かちょっかいを出されたら、悪口を言われたらどうしよう……。鉢合わせたところで何も起きないかもしれませんが、自分の中で不安がどんどん大きくなってしまうんですよね。
トランスジェンダーの人たちは、苦手な人たちがいる時だけでなく、あらゆる状況下でそれを感じていると想像すると、このダナの葛藤もより理解できるのではないでしょうか。
Secretの新CMはこちらから! ほんの30秒という時間しかかかりません、ぜひ見てみてくださいね。
Top Photo/NewNowNext
