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CULTURE

2016.09.28

アートのために365日、毎日違う男性とSEXした男性パフォーマーが学んだこととは?

ベルリンを拠点に活動しているパフォーマンスアーティスト、ミーシャ・バダシャン(Mischa Badasyan)。彼がここ2年をかけ手掛けたプロジェクトは、365日毎日異なる男性とSEXすること。そのアートが意味するもの、彼が学んだこととは?

 

 

 

誰しもが抱える「孤独」を体現したい

1609281source/vocativ

 

ロシア出身、ベルリン在住のパフォーマンスアーティスト、ミーシャ・バダシャン。彼は約2年前に、世間に蔓延している“一時的な出会い”、そしてそこから生まれる“孤独感”を探ることを目的としたプロジェクト「SAVE THE DATE」を発表した。その内容は“365日毎日違う男性とセックスすること”だった。発表当時、「ゲイに対する偏見を助長している」「それはアートじゃない」と批判にさらされたものの、この度無事に作品を完成させたようだ。

 

 

 

そもそも、どうしてこのプロジェクトを考えついたのだろうか。

 

 

「以前、すごくインスピレーションを得た人と出会って、エネルギーやパワーをもらい、また会いたいと思ったんだ。でも、だよ。拒絶されることになる。はじめは愛や望みをくれるのに、急に乗り越えられない大きな壁が立ちはだかるんだ。そういったことが僕を不安にさせる。壁を登ることすら怖くなって。もうどんな言葉も信じられない。だったら感じたことをさらけ出していこう、自分自身や聴衆に正直でいようと思い立って、孤独という重要かつ不可欠なトピックを題材にしたんだ。今まで、真の愛という関係性を経験してこなかった。だからこそ、自分の孤独を体現したかったんだ。365日、365人、365の男性、365のストーリーという形でね」

 

 

こういった孤独や虚無感、経験したことがある人も多いのでは。一方通行の感情、恵まれない期待、その場かぎりの関係に築かれる虚偽。

 

 

 

 

「SAVE THE DATE」が教えてくれたこと

1609282source/newnownext

 

このアートがミーシャにもたらしたものは、孤独に加え暴力、拒絶、そして喜びだった。最後の数ヶ月は、親密性を築くことはおろか他人とコミュニケーションをとることさえ困難だったという。その一方で「僕は愛を信じるロマンチストなんだ」という希望にも似た、自身の新たな一面に気付いたそう。

 

 

 

とりわけ、トランスジェンダーの男性やHIV陽性の男性から多くのことを学び、その出会いに感謝していると語っている。

 

 

「僕のセクシャリティは多様に変化したよ。みんなが“新しい僕”をつくっていくんだ。トランス男性とデートした時も違う自分を感じたし、ベルリンの売春エリアでストレートの男娼をピックした時は、自分も男娼になった気がしたよ。同じような振る舞い方をしてたんだ。言葉やら動きなんかが、ストリートのセックスワーカーとそっくりだったね」

 

 

男性器と女性器、両方を持つトランス男性との出会いから、人間の体がいかに繊細で、同時に強さを持ち合わせているかを学び、何人ものHIV陽性の男性を通して、理解し受け入れるということを学んだそう。

 

 

 

「彼らが僕をつくり、僕は彼らのリフレクションになる。相手の一部になりたいんだね。相手の体、時間、物語、人生」

 

 

そうして他人が自分の一部に、また自分が他人の一部になることで満たされるのかもしれない。それが孤独の上であっても。

 

 

 

 

アートには負の要素も付随する

Mischa Badasyansource/SPIEGEL ONLINE

 

プロジェクトの準備は6ヶ月間。HIV検査をはじめとする健康管理はもちろん、コンセプト自体が変化し、それに合わせて調整する時間が必要だった。道徳的・倫理的に問題があるんじゃないか、この非常識なアイデアをどう完成させようかと悩んだ時も。それでも、ミーシャは自分の道を曲げない。

 

 

「芸術の美しさは、一般的に正しいか間違ってるかで測れないと思うんだ。常に学びある人生経験そのものなんだよ。間違いを犯すことを恐れていたら芸術家にはなれない。もはや痛みさえパフォーマンスアートの根底にあるのかもしれない」

 

 

 

多くの人にも別れを告げなければいけなかった。プロジェクトを進行するためには、負のエネルギーも受け入れなければいけないのだ。相手に拒絶されることも多々あり、それでも探し続けなきゃいけないことにめげそうになったが、そういう時は「これはプロジェクトなんだ」と自分に言い聞かせていたという。

 

 

プロジェクトを通して、暴力とセクシャリティの関係も知ったというミーシャ。最後の4〜5カ月は、気を高めるために体を痛めつけたりと、暴力なしにSEXを楽しめなかったらしい。

 

 

 

もちろん良いデートも多数経験している。LAから飛んできてくれたというダンサーとは、相互の芸術性を磨く機会に。今も良好な関係を築いているそう。世界中からはメッセージが届き、悩みを打ち明けては心を解放してくれる人もいるとか。

 

 

 

 

アートを通して伝えたいこととは?

1609284source/SOMA ART GALLERY

 

ゲイコミュニティからの批判や差別はいまだに続いているそうだが、ミーシャにはこういう思いがあるという。

 

 

「みんなが自分らしく、そして差別をすることなく出会いを楽しめればそれで良いんじゃないかな。お互いに正直であってほしい。SEXをして憂鬱になることって誰も認めないよね。ゲイコミュニティでは孤独を話さない。良い体や良い雰囲気、良いところを見せたいだけ。そろそろ目を覚ます時だと思うんだ」

 

 

 

 

「SAVE THE DATE」を芸術と呼ぶか呼ばないかは、人それぞれかもしれない。批判も止まらない。たしかに365日毎日違う男性とSEXすること自体は、逸脱した行為に思える。共感できない人にとって、彼のパフォーマンスを感じ、そこから学ぶことは難しい。それでも、人と人のつながりの中に何かを見い出したのなら、それらを理解する人やミーシャにとって価値ある芸術だろう。

 

 

 

彼は現在「TOUCH」という新しいプロジェクトに取り組んでいる。失ってしまった人々との関係を再構築することがテーマだという。

 

 

「何かを理解するにためには、触れなくちゃいけないから」

 

 

 

なんだか説得力がある。

 

 

 

 

「SAVE THE DATE」は動画プロジェクトとしても動いている。
また、365日の体験は今後ドキュメンタリー化されるそうだ。

 

 

 

 

Top Photo/viemeo

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