アトランタ出身のラッパー、ヤング・サグ(Yonug Thug)が本年3作目となるミックステープ『JEFFREY』をリリース。そのアートワークでは大胆なドレスに身を包んだ姿を披露、独特の世界観でHIPHOP界を賑わせています。
自身の本名を冠にした『JEFFREY』
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25歳の新鋭ラッパー、ヤング・サグが自身の本名ジェフリー・ウィリアムズを冠にしたミックステープ『JEFFREY』をリリースしました。当初、『No, My Name is Jeffrey』という否定から入る文章をタイトルとしていたそうで、“ヤング・サグではなく実際の自分に戻る”という意が込められています。
ミックステープに収められた楽曲の各タイトルには、彼が尊敬する人物の名前があてがわれています。カニエ・ウェストをはじめ、グッチ・メインにフューチャー、リアーナ、WBC元チャンピオンのフロイド・メイウェザー・ジュニア、人命を守るために動物園で射殺されたゴリラ、ハランベの名前も。先行してリリースされたヒット曲『Pick Up the Phone』も収録。
何を着ようとギャングスタはギャングスタ
そして最も話題となっているのが、その大胆なアートワーク。一部では“Samurai meets Beyoncé(サムライとビヨンセの融合)”などと騒がれているのですが、大阪文化服装学院出身のデザイナー、アレッサンドロ・トリンコーネの卒業制作に影響を受けたという番傘風のハット、そしてドレスに身を包んだヤング自身がポージングしているんです。
“”PLAYLIST”” I named the songs after all my idols…
“”JEFFERY””さん(@thuggerthugger1)が投稿した写真 –
彼の“決断”にインターネット上では賛否両論の声が挙がっています。ラッパーのデザイナー(Desiigner)は「信じられないほど芸術的で美しく大きな鳥のようだ」と絶賛、エイサップ・ファーグ(A$AP Ferg)も「よく表現されてる、それが彼。ヤング・サグだよ」とコメントしている一方で、ファット・ジョーは「俺がドレスを着ることはないね。彼に関しては良く分からない……」と発言。また、このInstagramの写真のコメント欄には、彼は何をしたいのかという疑問や、ヤングはホモだ!という性差別ととれるファンの声もチラホラ。とはいえ、作品としてのミックステープを称賛する意見が多数。
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ヤングがジェンダーレスなファッションを披露したのは今回が初めてのことではありません。また、つい最近ではカルヴァン・クラインの秋冬広告モデルとして登場、ウィメンズの服を身にまとっているんです。その際には「ドレスを着てようがバギーパンツを履いていようが、ギャングスタはギャングスタ。性別は関係ない」と名言を残しています。
事実、彼には彼女(婚約者)とこどもがいますし、女性が好きということで同性愛を公言しているわけではなく、ファッションの表現の自由、またそれに伴い性別という枠組みにとらわれないというだけのこと。そのため、ゲイではないとしっかり否定しています。それでも、彼は男の友人のことも「Bae(Before Anyone Else=大切な人)」「Lover(恋人)」「Hubby(夫)」と呼ぶことがあるそうですけどね! つまり、彼はホモフォビアなのではなく、単純に“ゲイではない”という事実を述べているんです。
“マスキュリニティ”優勢のヒップホップ界。ティピカルトピックは「女」「金」「ドラッグ」。
今でこそ、カミングアウトしているラッパーが出てきてはいるものの、依然としてホモフォビア(同性愛嫌悪)は根強く残っています。むしろ、同性愛を叩くことを一種のスタイルとしている人もいるでしょう。音楽としてのバックグランドもあると思うので、何が間違っていて何が正しいと言い切ることができませんが、ヤング・サグのスタイルがメインストリームで受け入れ続けられる限り、そういったHIPHOPもあっていいよね、マスキュリニティを前に出さなくても成功するよね、ということは言えるのではないでしょうか。
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